誰もいない最終列車間近の車内。
私は座席にへたり込んでぼおっと前を見ていると目の前には同じように疲れたサラリーマン。
彼はしばらくの間、ぼおっと床を眺めていたが、やがて立ち上がり、しばらくしてまた座った。
(なんだろう..?)
明らかに不審な様子に、私はスマホの画面を見つめる彼方で彼の動作を伺う。
「ふっ...ぅぅ..」
「ぅぅ.....ふぅ.....」
彼は酔った風で、粗く息を吐いていて、そしてきょろきょろきょろと辺りを見渡す。
(変な人..)
私がそう思ったのはそれなりに理由があった。
だが、彼が次にとった行動、それは彼自身の評価を決定づける。
カチャカチャ..
彼は自らのズボンのベルトを外した。
そして徐に前をさらけ出し、見たくないものがぼろんっと溢れる。
「あ...」
思わず声を出した私。
周囲を確認すると、何故か車内には彼と私だけだった。
(なんで..)
恐怖、と言うよりも何故車内で?と言う不思議な感情が沸き起こる。
別に身の危険を感じている訳では無かった。
ただ不思議で異様なだけ。
彼は私の反応をチラッチラッと確認した。
そしてその後で自らのモノをしごき出す。
既にそれは大きくなっていて、前をさらけ出す前から大きかったのかも知れない、と思った。
(どうしよう..)
私は取り敢えず寝たふりをした。
目をつぶり、顎を引いて俯く。
そして時々はちらちらっと瞳を開け、目の前の、異様な光景を盗み見た。
「はぁ...ぁぁ..」
「ぁぁ...」
彼はゆっくりと、たまに素早くペニスをしごいていた。
上の方から包み込むようにくりみ、くりくりと先端部を刺激する。
そしてそれに飽きたかと思うと、もう一度握り直して上下にしごく。
「ぅぁ...」
「ぁ...ぁ..」
次第に盛り上がってきた彼はその呻き声と手のしごきを強めた。
彼が私のことを見ているのは間違いない。
(やだ.....)
気持ち悪い、と言う感情は不思議と無かった。
ただ何とも言えない、異常な状況の中にいる、と言うことだけを意識する。
(ちょっとは..)
意識的に足を開く。
黒いストッキングを履いているので、下着は見えないはずだが、スカートの中彼の視線が刺さっている事は想像が出来た。
「ぅっ...ぁ...ぁ..」
目をつぶった、遮られた視界の向こう、彼が短く呻いていた。
きっと、果てているに違いない、と思った。
そして私はそのまま目を閉じたままでいる。
1駅、2駅、何駅か停車し、通り過ぎる。
(あ...)
再び目を開けた際には彼の姿はもう無かった。
2017/11/3 新規掲載
2019/8/22 内容更新
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