■バイト終わりに
バイト先の漫喫が翌日に設備点検の予定があると言うことで、休みだった。
そして、翌日休みと言うことは泊まりの客もいない。
そんな、いつもより閑散とした店内で俺と同僚の由奈は閉店に向けた準備をしていた。
「マサキー、そっちは?」
由奈が店の向こうから声をかけた。
俺はブースの一つ一つを確認し、忘れものや、ゴミ箱のゴミの捨て忘れや、特に汚れた点が無いかを点検して回る。
そして一通り確認を終え、受付の前に戻ってきた。
「ありがとうございましたー」
23時55分、終電前に帰ろうとする、最後の客の会計を済ませて、由奈が送り出しているところだった。
「ふぅっ…」
「お疲れー」
店の入り口に看板を立て、俺たちは一息ついた。
「おつかれ。」
「滅多に無いね。こんなの」
「そうね。漫画喫茶って大体は24時間営業だから....」
「こうやって、普通のお店見たいに閉店するなんて無いね。」
由奈はうんうんと頷いて俺に同意した。
「さて…」
「帰るか。それともーーーー」
「ちょっと...休憩する?」
ずっと立ちっぱなしの作業だったから、足元が疲れていた。
俺はドリンクバーからコーラを注ぎ、由奈に渡してやると、由奈が素直に同意する。
「そうね。TVでも…みよっか」
いつも気軽に話し合う関係であった由奈は、あっけらかんとそう言う。
ちょうど、深夜番組が始まる時間帯でもあった。
「いいねっ!」
「そうしよう」
俺は彼女を空きブースの一つに誘った。
店内には誰もいないから、もちろん入り口は閉めない。
二人して、ソファに座り、TVをつける。
周りが画面の明るさで白くなる。
しばらくは黙って番組を見ていた。
「なあ…」
由奈の方を見た。
彼女は夢中で番組を見ている。
「お前ってさ、こうやって、ブースに入ったお客さんが、中で何してるかってーー」
「考えたことある?」
由奈がきょとん、とした顔をした。
「中でー?、お客さんが...?」
「そうねぇ…」
首を傾げ色々と考えているようだった。
「昼寝したりとかー、漫画読んだりとかー」
「後は……ね?」
少し、気まずいような、恥ずかしいような顔をする。
「アレだろ?」
俺はニヤついて、話を続けた。
「やだ....そうね....」
「エッチなー、動画見たりとか...かな?」
由奈が笑う。
「うん…」
「そう…男の人はみんな見てるでしょう?」
「こう言うところでも..」
俺はそれには同意しなかった。
漫画喫茶のPCにはつきものの、無料動画サービス。
映画なんかも豊富だが、男性が一人で利用する場合は大抵はエロ動画を参照しているのが多いだろう。
「でさ…由奈」
「男ってさ…エロ動画みてさ…」
「ナニしてると思う?」
ちょっとイタズラぽく尋ねる。
その先は由奈が困るのを分かっててやった。
「ナニって……うん…」
「………やだっ…」
由奈は顔を真っ赤にして向こうを向いた。
漫画喫茶で働いているものなら、一度ならず、日々目にするゴミ箱の中身
丸められたティッシュの中はなんなのか、ウブな由奈でさえ、理解しているのは当然のことだと思っていた。
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